概略
2012年2月29日、株式会社フェローテックはシンジケート方式による短期コミットメントライン設定契約を締結したと発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
- 契約金額:5,000百万円
- コミットメント期間:1年間
- 資金使途:運転資金
- ジョイント・アレンジャー:株式会社三菱東京UFJ銀行、住友信託銀行株式会社
2012年2月13日、同社は2012年3月期第3四半期決算を発表した。
(決算短信へのリンクはこちら、2012年3月期第3四半期決算の項目へのリンクはこちら)
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業績動向
四半期実績推移
2012年3月期第3四半期実績
2012年2月13日、同社は2012年3月期第3四半期決算を発表した。会社予想に変更はない。
第3四半期累計期間について、売上高は前年比25.2%増の49,776百万円となったが、営業利益は同4.4%増の4,544百万円に留まった。
第3四半期累計期間の各セグメントの事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。
装置関連事業:売上高20,145百万円(前年比0.5%減)、営業利益2,429百万円(同6.0%増)
- 半導体・LED・FPD業界においては、スマートフォンやタブレット端末が好調だったが、薄型TVや他の電子機器の販売などに減速感が強まってきている
- 真空シールは、半導体及びFPD向けの設備投資やLED製造装置の設備投資が一巡したため、需要が減退した
- デバイスメーカーの装置稼働率も低下したため、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も減少に転じた
- 新興国市場向けLED蒸着装置の普及版の開発ならびにセラミックス製品の新材料開発に取り組んでいる
太陽電池関連事業:売上高23,510百万円(前年比82.7%増)、営業利益1,285百万円(同28.2%増)
- 太陽電池業界では、太陽電池セルやモジュールの在庫余剰感から太陽電池パネルの価格下落が続き、各太陽電池メーカーは生産調整を余儀なくされている。その結果、新規設備投資計画の延期など投資意欲は後退している
- シリコン結晶製造装置の売上高はほぼ計画通りとなった
- 太陽電池用シリコンは、太陽電池セルや太陽電池用ウエーハの価格下落が続き、売上高が減少した
- 消耗品である石英坩堝の売上高は底堅く推移した
電子デバイス事業:売上高4,311百万円(前年比16.5%減)、営業利益576百万円(同32.5%減)
- 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは、一時的な在庫調整により売上高が減少
- 民生製品向けの家電需要が減退したものの、バイオや光通信向けなどは底堅く計画通りに推移
SR社は2012年2月17日に同社にインタビューを行った。インタビューで受けた印象からすると第4四半期会計期間は第3四半期会計期間よりも更に業績が悪化する可能性がある。従って、営業利益でみて、2012年3月期通期会社予想に対する第3四半期累計期間の進捗率は87.4%と比較的高いが、2012年3月期通期会社予想を達成できるかどうかは実績をみてみないとわからないと考える。
セグメントでいえば、装置関連事業と太陽電池関連事業が引き続き厳しい模様。先行きを見通す上では、しばらく様子をみる必要があるとしている。具体的には、顧客の需要状況を図るバロメーターとして、同社は、2012年3月下旬に開催される予定のセミコンチャイナに注目しており、その後であれば、もう少し先行きの見通しが立てられるだろうとのことだ。
もっとも、同時に、太陽電池関連事業を巡る環境において底打ちの兆しは出てきたとも述べている。具体的にいえば、ポリシリコン価格、太陽電池用ウエーハは既に底打ちしているほか、一部太陽電池メーカーで投資を再開する動きも出始めたとのことだ。
また、中長期的視点に立てば、中国における需要が特に期待されるとのことである。例えば、中国では2011年に入ってからメガソーラープロジェクトの申請を受け付け始めたが、2011年12月末は約20GWに達した模様。こうしたプロジェクトは2012年に入ってから実際に始動するものとみられている。また、中国国内では、これまで設置された単結晶引上製造装置が、これまでの6インチ対応からより高効率の8インチ対応へと置き換えられる可能性が高いとも同社は述べている。SR社の理解では、8インチ対応の単結晶引上製造装置において同社は相対的に優位性を持つ。単結晶引上製造装置の総出荷台数が2006年から約6年間で約2,000台、仮に同社のシェアが20%であるとするならば、2006年の単結晶引上製造装置の設置台数累計は市場全体で約12,000 台と推定できる。このうち、実際にどのぐらいの規模の置き換えが生じるかは不明ながら、規模が大きいことは確かだ。
同社の最近の動きでもう一つ注目されるのは、新興国市場向けLED蒸着装置の普及版の開発を行っている点だ。中国政府は省エネルギー、環境保護政策の一環として、省エネ照明製品の内需拡大を図り、省エネ産業の発展を推進している。具体的には、2016年までに50W以上の全ての白熱球のLEDへの入れ替えを進めることを目標に、白熱球の輸入、製造、販売に対する規制を強化させつつある。それによって生じる中国の潜在的なLED市場の規模は非常に大きいものと目される。LED蒸着装置の普及版の開発が完了すれば、中国市場が拡大するタイミングで、それに即した装置の投入が図れることを意味しよう。
2012年3月期第2四半期実績
2011年11月14日、同社は2012年3月期第2四半期決算及び通期会社予想の下方修正を発表した。
2012年3月期第2四半期累計期間は3つのセグメント全てが増収増益となった。特に太陽電池事業が増収増益に寄与し、全社的な売上、利益に対する構成比も高まっている。
第2四半期累計期間の各セグメントの事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。
装置関連事業:売上高17,049百万円(前年比23.5%増)、営業利益1,878百万円(同37.1%増)
- 各製品の需要に一服感がみられるが、第2四半期累計期間において売上高は計画通り
- 真空シールは、半導体が新興国需要に牽引されアジア、米国市場が堅調に推移。一方、LCD市場が軟調となり、有機EL向けのみが増加したほか、LED市場の設備投資もほぼ一巡
- デバイスメーカーの装置稼働率が高止まりによって、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も堅調に推移
太陽電池関連事業:売上高16,704百万円(前年比145.9%増)、営業利益984百万円(同175.4%増)
- シリコン結晶製造装置は、製造能力を拡大し、客先の要求に対応。出荷が順調に進んだ
- 太陽電池用シリコンは、(太陽電池セル・モジュールの市場在庫が増加し、太陽電池用ウエーハの価格が下落したものの)売上高が堅調だった
- 坩堝も日本・韓国・中国市場が拡大し、売上高が堅調であった
電子デバイス事業:売上高3,220百万円(前年比5.6%増)、営業利益526百万円(同28.1%増)
- 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは底堅く推移
- 民生製品向けの家電需要が季節性も有り堅調。その他用途向けも堅調であった
第2四半期累計期間の実績が上記の通り堅調であった一方、同社は2012年3月期通期会社予想を下方修正した。その概要は下記の通りとなる。
2012年3月期通期会社予想
- 売上高:63,000百万円(当初予想70,000百万円)
- 営業利益:5,200百万円(同7,500百万円)
- 経常利益:4,200百万円(同7,200百万円)
- 当期純利益:2,700百万円(同5,000百万円)
同社は下方修正の理由として、1)エレクトロニクス産業で、半導体・LED・FPDの最終需要が減速し、各種製造装置の投資意欲が後退、今後の同社装置関連事業の受注減少が見込まれること、2)太陽電池産業で、最終消費地である欧州市場における太陽電池パネルの在庫調整が進んでおらず、部材である太陽電池セルやウエーハの価格下落が続いているため、シリコン製造措置需要の減少を見込んでいること、を指摘している。
2012年3月期第1四半期実績
2011年8月12日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。また、2012年3月期上期の会社予想の上方修正も同時に発表した
2012年3月期第1四半期は3つのセグメント全てが増収増益となった。特に太陽電池事業が増収増益に寄与し、全社的な売上、利益に対する構成比も高まっている。
各セグメントの事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。
装置関連事業:売上高7,175百万円(前年比20.6%増)、営業利益765百万円(同37.1%増)
- 真空シールは台湾、韓国での製造装置稼働率の高さを背景に半導体・FPD関連の設備投資が継続され、また、省エネ照明であるLEDの製造装置用途も強く売上高が伸張
- デバイスメーカーの装置稼働率が高止まりしているため、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も堅調に推移
太陽電池関連事業:売上高9,349百万円(前年比220.1%増)、営業利益1,206百万円(同396.3%増)
- シリコン結晶製造装置の出荷が順調に進んだことにより、売上高は大幅な増加となった
- 新型シリコン結晶製造装置と角切ソー装置を発売し、順調に受注を獲得している
- 太陽電池用シリコンは、シリコンインゴット、太陽電池用ウエーハの販売が堅調に推移したことにより、売上高が伸張した
- 石英坩堝は受注数量に見合う増産体制を進めた結果、売上が伸長
- 多結晶製造装置に用いる角槽の新工場が杭州市に本年7月より竣工。さらに、寧夏銀川市に石英坩堝、太陽電池用シリコンの新工場二棟の建築に着手している
電子デバイス事業:売上高1,771百万円(前年比23.2%増)、営業利益327百万円(前年比115.1%増)
- 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは、新興国市場での自動車販売の拡大、特に中国での高級車販売に支えられ底堅く推移
- 民生製品向けの家電需要が一巡したが、半導体製造機器、光通信向けなどの高機能製品は堅調に推移。また、パワーデバイス向け基板の販売を開始した
- 同製品は主に中国工場で生産されているため、上昇する人件費抑制の目的で自動化ラインを増設する計画
2012年3月期上期の上方修正は下記の通り。
2012年3月期上期
- 売上高:35,000百万円(当初予想33,600百万円)
- 営業利益:4,000百万円(同3,680百万円)
- 経常利益:3,700百万円(同3,500百万円)
- 四半期純利益:2,400百万円(同2,400百万円)
同社は上方修正理由について、第1四半期の実績が好調であったためとしている。一方、2012年3月期通期の会社予想は、景気や為替動向等の経営環境の先行きが極めて不透明であることを理由に据え置かれた。
同社は通期会社予想を据え置いた一因として、半導体製造装置やFPD製造装置の業況が悪化しており、半導体製造装置やFPD製造装置用の部材に対する需要(装置関連事業の売上高)が下期に弱含む可能性がある点を指摘している。もっとも、太陽電池関連事業に関しては、市場全体の供給過多の懸念などはあるものの、足下も堅調に推移している模様であり、太陽電池関連事業は逆に上振れる可能性もあるというのがSR社の受けた印象である。
2012年3月期の会社予想
同社は2011年11月14日に通期会社予想の修正を発表した。同社は下方修正の理由として、1)エレクトロニクス産業で、半導体・LED・FPDの最終需要が減速し、各種製造装置の投資意欲が後退、今後の同社装置関連事業の受注減少が見込まれること、2)太陽電池産業で、最終消費地である欧州市場における太陽電池パネルの在庫調整が進んでおらず、部材である太陽電池セルやウエーハの価格下落が続いているため、シリコン製造措置需要の減少を見込んでいること、を指摘している。
同社による各セグメントの2012年3月期下期の見通しは以下のようになる。
装置関連事業
- 真空シールは半導体、LED、FPDなど各市場における投資意欲減退を背景に需要は減少する見通し
- デバイスメーカーの装置稼働率の低下によって、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も減少へ
太陽電池関連事業
- シリコン結晶製造装置はPV市況の悪化により、納期延期の要請あり。その他引き合いはあるが、受注に至るまでに時間を要する。中国政府の金融引き締めによって、特に中小メーカーの顧客に影響が出ている
- 太陽電池用シリコンは、市況の悪化から多結晶の生産調整を実施。高変換効率品の8インチ単結晶生産に集中する
- 石英坩堝は堅調な一方、角槽はやや軟調の見通し
電子デバイス事業
- 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは、最終需要(自動車)のモデルチェンジの影響で一時的な在庫調整を見込む
- 民生製品向けは季節性も有り上期より減少の見通し。その他用途向けも堅調な展開を予想
同社は複数の産業に対して製品を販売しているが、半導体、LED、FPD、太陽電池とその主たる販売先の産業がいずれも落ち込んでいることが、同社の収益を圧迫する見込みだ。
同社はこうした業績変動に対する今後の対策、つまりシクリカル性の排除に向けた対応として、1)新製品の開発・投入、2)部材のコスト削減・経費削減・在庫削減、さらには人員削減などを実施し、全社を挙げてコストダウンを行うこと、などを挙げている。2011年11月24日に行われた決算説明会において、同社は新製品の例として、LEDに対する製品ラインナップ(サファイア炉、消耗品等)の拡充を挙げている。中国で今後LEDに対する需要が高まってくるとみているためだ。また、2011年11月時点では受注が減少しているシリコン結晶製造装置に関しても、今後買い替え需要が顕在化するだろうと同社は述べている。すなわち、昔設置された発電効率、あるいは歩留まりの悪い製造装置に変わり、同社の手掛ける高効率の製造装置に対� �る需要が高まるとの見方である。2012年はこうした製造装置の買い替え需要や新製品の投入が鍵になる模様である。
将来の展望
同社は2011年5月30日に中期経営計画を発表した。同社は約10年前に中期経営計画を作成して以来、長い間、中期経営計画を作成してこなかったが、環境および自然エネルギー分野へのより一層の経営資源の集中という方向性が定まったことから、今回中期経営計画を策定したとしている。
同社は、中期経営計画の目標値を2014年3月期売上高で100,000百万円と置いている。ポイントは、1)太陽電池関連装置、消耗品ビジネス(坩堝など)の更なる拡大、2)装置関連事業におけるLED関連ビジネスの着実な成長、などを狙っていくという点であろう。同社は事業毎の目標値を開示していないが、同社の資料によれば、成長ドライバーは太陽電池関連事業であり、2014年3月期の売上構成比で60%強をめざす模様。また、LED関連ビジネスが含まれる装置関連事業も半導体業界の調整を経て、2013年3月期から2014年3月期にかけては大幅な増収を見込んでいる。
同社によれば、各事業の方向性は下記のようになる。
装置関連事業
- 真空シール:高付加価値新製品の投入、韓国・中国における市場占有率の向上
- 石英製品:太陽電池向け(中国企業向け)の拡販、LED/化合物半導体向けの拡販
- LED:真空蒸着装置の拡販、サファイア炉の開発
太陽電池関連事業
- 太陽電池用製造装置:製品ラインナップの拡充、機能向上により他社製品との差別化を追求。中国以外の海外市場開拓も進める(中国とそれ以外の地域の売上高構成比を、60%:40%へ)
- 消耗品(坩堝、ホットゾーンなど):生産能力増強と品質向上によりシェアアップを図る
- 太陽電池用部材(インゴット、ウエーハなど):新工場建設による供給能力増大
電子デバイス事業
- サーモモジュール:自動車温調シート以外の用途へ拡販を進める
太陽電池関連事業に関していえば、同社が中期経営計画を公表した時点で、太陽電池用セル・モジュール価格は低下している。この要因として、当該市場における世界的な過剰供給能力(オーバーキャパシティ)を指摘する向きもある。一方、中長期的にみれば、太陽光発電システムに対する需要は大幅な拡大が見込まれている(「市場とバリューチェーン」の項参照)。従来からクリーンエネルギーとして注目されてきた分野ではあるが、2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原発の事故が各国のエネルギー政策に大きな影響を与え、需要拡大を後押しする可能性がある。そうした点を踏まえれば、同社のビジネスチャンスは広がっているともいえ、今後も太陽電池関連事業を中心に同社の動向が注目される。
一方、LED関連ビジネスに関していえば、同社は2010年1月に英Edwards Vacuum社より真空蒸着装置関連事業(Tescal事業部)を譲り受け、これによって本格的にLED市場での展開を開始した。Tescal事業が手掛けているのは、真空蒸着装置の製造・販売である。同装置はLEDの製造工程ではMOCVDの次の工程で使用される、LEDの製造工程では不可欠な装置である。同社は2011年5月時点でデモ機を開発済であり、それを東南アジア市場のデバイスメーカーに評価してもらい、同市場に参入したいとコメントしている。また、LED関連でいえば、同社のシリコン単結晶製造技術を活用し、サファイア炉の開発及び結晶製造技術の確立をめざすとしている。
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