2012年4月26日木曜日

フェローテック(6890) - 企業分析レポート / シェアードリサーチ


概略

2012年2月29日、株式会社フェローテックはシンジケート方式による短期コミットメントライン設定契約を締結したと発表した。

(リリース文へのリンクはこちら)

  • 契約金額:5,000百万円
  • コミットメント期間:1年間
  • 資金使途:運転資金
  • ジョイント・アレンジャー:株式会社三菱東京UFJ銀行、住友信託銀行株式会社


2012年2月13日、同社は2012年3月期第3四半期決算を発表した。

(決算短信へのリンクはこちら、2012年3月期第3四半期決算の項目へのリンクはこちら)


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業績動向

四半期実績推移

2012年3月期第3四半期実績

2012年2月13日、同社は2012年3月期第3四半期決算を発表した。会社予想に変更はない。

第3四半期累計期間について、売上高は前年比25.2%増の49,776百万円となったが、営業利益は同4.4%増の4,544百万円に留まった。

第3四半期累計期間の各セグメントの事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。

装置関連事業:売上高20,145百万円(前年比0.5%減)、営業利益2,429百万円(同6.0%増)

  • 半導体・LED・FPD業界においては、スマートフォンやタブレット端末が好調だったが、薄型TVや他の電子機器の販売などに減速感が強まってきている
  • 真空シールは、半導体及びFPD向けの設備投資やLED製造装置の設備投資が一巡したため、需要が減退した
  • デバイスメーカーの装置稼働率も低下したため、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も減少に転じた
  • 新興国市場向けLED蒸着装置の普及版の開発ならびにセラミックス製品の新材料開発に取り組んでいる

太陽電池関連事業:売上高23,510百万円(前年比82.7%増)、営業利益1,285百万円(同28.2%増)

  • 太陽電池業界では、太陽電池セルやモジュールの在庫余剰感から太陽電池パネルの価格下落が続き、各太陽電池メーカーは生産調整を余儀なくされている。その結果、新規設備投資計画の延期など投資意欲は後退している
  • シリコン結晶製造装置の売上高はほぼ計画通りとなった
  • 太陽電池用シリコンは、太陽電池セルや太陽電池用ウエーハの価格下落が続き、売上高が減少した
  • 消耗品である石英坩堝の売上高は底堅く推移した

電子デバイス事業:売上高4,311百万円(前年比16.5%減)、営業利益576百万円(同32.5%減)

  • 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは、一時的な在庫調整により売上高が減少
  • 民生製品向けの家電需要が減退したものの、バイオや光通信向けなどは底堅く計画通りに推移

SR社は2012年2月17日に同社にインタビューを行った。インタビューで受けた印象からすると第4四半期会計期間は第3四半期会計期間よりも更に業績が悪化する可能性がある。従って、営業利益でみて、2012年3月期通期会社予想に対する第3四半期累計期間の進捗率は87.4%と比較的高いが、2012年3月期通期会社予想を達成できるかどうかは実績をみてみないとわからないと考える。

セグメントでいえば、装置関連事業と太陽電池関連事業が引き続き厳しい模様。先行きを見通す上では、しばらく様子をみる必要があるとしている。具体的には、顧客の需要状況を図るバロメーターとして、同社は、2012年3月下旬に開催される予定のセミコンチャイナに注目しており、その後であれば、もう少し先行きの見通しが立てられるだろうとのことだ。

もっとも、同時に、太陽電池関連事業を巡る環境において底打ちの兆しは出てきたとも述べている。具体的にいえば、ポリシリコン価格、太陽電池用ウエーハは既に底打ちしているほか、一部太陽電池メーカーで投資を再開する動きも出始めたとのことだ。

また、中長期的視点に立てば、中国における需要が特に期待されるとのことである。例えば、中国では2011年に入ってからメガソーラープロジェクトの申請を受け付け始めたが、2011年12月末は約20GWに達した模様。こうしたプロジェクトは2012年に入ってから実際に始動するものとみられている。また、中国国内では、これまで設置された単結晶引上製造装置が、これまでの6インチ対応からより高効率の8インチ対応へと置き換えられる可能性が高いとも同社は述べている。SR社の理解では、8インチ対応の単結晶引上製造装置において同社は相対的に優位性を持つ。単結晶引上製造装置の総出荷台数が2006年から約6年間で約2,000台、仮に同社のシェアが20%であるとするならば、2006年の単結晶引上製造装置の設置台数累計は市場全体で約12,000 台と推定できる。このうち、実際にどのぐらいの規模の置き換えが生じるかは不明ながら、規模が大きいことは確かだ。

同社の最近の動きでもう一つ注目されるのは、新興国市場向けLED蒸着装置の普及版の開発を行っている点だ。中国政府は省エネルギー、環境保護政策の一環として、省エネ照明製品の内需拡大を図り、省エネ産業の発展を推進している。具体的には、2016年までに50W以上の全ての白熱球のLEDへの入れ替えを進めることを目標に、白熱球の輸入、製造、販売に対する規制を強化させつつある。それによって生じる中国の潜在的なLED市場の規模は非常に大きいものと目される。LED蒸着装置の普及版の開発が完了すれば、中国市場が拡大するタイミングで、それに即した装置の投入が図れることを意味しよう。

2012年3月期第2四半期実績

2011年11月14日、同社は2012年3月期第2四半期決算及び通期会社予想の下方修正を発表した。

2012年3月期第2四半期累計期間は3つのセグメント全てが増収増益となった。特に太陽電池事業が増収増益に寄与し、全社的な売上、利益に対する構成比も高まっている。

第2四半期累計期間の各セグメントの事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。

装置関連事業:売上高17,049百万円(前年比23.5%増)、営業利益1,878百万円(同37.1%増)

  • 各製品の需要に一服感がみられるが、第2四半期累計期間において売上高は計画通り
  • 真空シールは、半導体が新興国需要に牽引されアジア、米国市場が堅調に推移。一方、LCD市場が軟調となり、有機EL向けのみが増加したほか、LED市場の設備投資もほぼ一巡
  • デバイスメーカーの装置稼働率が高止まりによって、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も堅調に推移

太陽電池関連事業:売上高16,704百万円(前年比145.9%増)、営業利益984百万円(同175.4%増)

  • シリコン結晶製造装置は、製造能力を拡大し、客先の要求に対応。出荷が順調に進んだ
  • 太陽電池用シリコンは、(太陽電池セル・モジュールの市場在庫が増加し、太陽電池用ウエーハの価格が下落したものの)売上高が堅調だった
  • 坩堝も日本・韓国・中国市場が拡大し、売上高が堅調であった

電子デバイス事業:売上高3,220百万円(前年比5.6%増)、営業利益526百万円(同28.1%増)

  • 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは底堅く推移
  • 民生製品向けの家電需要が季節性も有り堅調。その他用途向けも堅調であった

第2四半期累計期間の実績が上記の通り堅調であった一方、同社は2012年3月期通期会社予想を下方修正した。その概要は下記の通りとなる。

2012年3月期通期会社予想

  • 売上高:63,000百万円(当初予想70,000百万円)
  • 営業利益:5,200百万円(同7,500百万円)
  • 経常利益:4,200百万円(同7,200百万円)
  • 当期純利益:2,700百万円(同5,000百万円)

同社は下方修正の理由として、1)エレクトロニクス産業で、半導体・LED・FPDの最終需要が減速し、各種製造装置の投資意欲が後退、今後の同社装置関連事業の受注減少が見込まれること、2)太陽電池産業で、最終消費地である欧州市場における太陽電池パネルの在庫調整が進んでおらず、部材である太陽電池セルやウエーハの価格下落が続いているため、シリコン製造措置需要の減少を見込んでいること、を指摘している。

2012年3月期第1四半期実績

2011年8月12日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。また、2012年3月期上期の会社予想の上方修正も同時に発表した

2012年3月期第1四半期は3つのセグメント全てが増収増益となった。特に太陽電池事業が増収増益に寄与し、全社的な売上、利益に対する構成比も高まっている。

各セグメントの事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。

装置関連事業:売上高7,175百万円(前年比20.6%増)、営業利益765百万円(同37.1%増)

  • 真空シールは台湾、韓国での製造装置稼働率の高さを背景に半導体・FPD関連の設備投資が継続され、また、省エネ照明であるLEDの製造装置用途も強く売上高が伸張
  • デバイスメーカーの装置稼働率が高止まりしているため、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も堅調に推移

太陽電池関連事業:売上高9,349百万円(前年比220.1%増)、営業利益1,206百万円(同396.3%増)

  • シリコン結晶製造装置の出荷が順調に進んだことにより、売上高は大幅な増加となった
  • 新型シリコン結晶製造装置と角切ソー装置を発売し、順調に受注を獲得している
  • 太陽電池用シリコンは、シリコンインゴット、太陽電池用ウエーハの販売が堅調に推移したことにより、売上高が伸張した
  • 石英坩堝は受注数量に見合う増産体制を進めた結果、売上が伸長
  • 多結晶製造装置に用いる角槽の新工場が杭州市に本年7月より竣工。さらに、寧夏銀川市に石英坩堝、太陽電池用シリコンの新工場二棟の建築に着手している

電子デバイス事業:売上高1,771百万円(前年比23.2%増)、営業利益327百万円(前年比115.1%増)

  • 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは、新興国市場での自動車販売の拡大、特に中国での高級車販売に支えられ底堅く推移
  • 民生製品向けの家電需要が一巡したが、半導体製造機器、光通信向けなどの高機能製品は堅調に推移。また、パワーデバイス向け基板の販売を開始した
  • 同製品は主に中国工場で生産されているため、上昇する人件費抑制の目的で自動化ラインを増設する計画

2012年3月期上期の上方修正は下記の通り。

2012年3月期上期

  • 売上高:35,000百万円(当初予想33,600百万円)
  • 営業利益:4,000百万円(同3,680百万円)
  • 経常利益:3,700百万円(同3,500百万円)
  • 四半期純利益:2,400百万円(同2,400百万円)

同社は上方修正理由について、第1四半期の実績が好調であったためとしている。一方、2012年3月期通期の会社予想は、景気や為替動向等の経営環境の先行きが極めて不透明であることを理由に据え置かれた。

同社は通期会社予想を据え置いた一因として、半導体製造装置やFPD製造装置の業況が悪化しており、半導体製造装置やFPD製造装置用の部材に対する需要(装置関連事業の売上高)が下期に弱含む可能性がある点を指摘している。もっとも、太陽電池関連事業に関しては、市場全体の供給過多の懸念などはあるものの、足下も堅調に推移している模様であり、太陽電池関連事業は逆に上振れる可能性もあるというのがSR社の受けた印象である。


2012年3月期の会社予想

同社は2011年11月14日に通期会社予想の修正を発表した。同社は下方修正の理由として、1)エレクトロニクス産業で、半導体・LED・FPDの最終需要が減速し、各種製造装置の投資意欲が後退、今後の同社装置関連事業の受注減少が見込まれること、2)太陽電池産業で、最終消費地である欧州市場における太陽電池パネルの在庫調整が進んでおらず、部材である太陽電池セルやウエーハの価格下落が続いているため、シリコン製造措置需要の減少を見込んでいること、を指摘している。

同社による各セグメントの2012年3月期下期の見通しは以下のようになる。

装置関連事業

  • 真空シールは半導体、LED、FPDなど各市場における投資意欲減退を背景に需要は減少する見通し
  • デバイスメーカーの装置稼働率の低下によって、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用するマテリアルの需要も減少へ

太陽電池関連事業

  • シリコン結晶製造装置はPV市況の悪化により、納期延期の要請あり。その他引き合いはあるが、受注に至るまでに時間を要する。中国政府の金融引き締めによって、特に中小メーカーの顧客に影響が出ている
  • 太陽電池用シリコンは、市況の悪化から多結晶の生産調整を実施。高変換効率品の8インチ単結晶生産に集中する
  • 石英坩堝は堅調な一方、角槽はやや軟調の見通し

電子デバイス事業

  • 主力の自動車温調シート向けサーモモジュールは、最終需要(自動車)のモデルチェンジの影響で一時的な在庫調整を見込む
  • 民生製品向けは季節性も有り上期より減少の見通し。その他用途向けも堅調な展開を予想

同社は複数の産業に対して製品を販売しているが、半導体、LED、FPD、太陽電池とその主たる販売先の産業がいずれも落ち込んでいることが、同社の収益を圧迫する見込みだ。

同社はこうした業績変動に対する今後の対策、つまりシクリカル性の排除に向けた対応として、1)新製品の開発・投入、2)部材のコスト削減・経費削減・在庫削減、さらには人員削減などを実施し、全社を挙げてコストダウンを行うこと、などを挙げている。2011年11月24日に行われた決算説明会において、同社は新製品の例として、LEDに対する製品ラインナップ(サファイア炉、消耗品等)の拡充を挙げている。中国で今後LEDに対する需要が高まってくるとみているためだ。また、2011年11月時点では受注が減少しているシリコン結晶製造装置に関しても、今後買い替え需要が顕在化するだろうと同社は述べている。すなわち、昔設置された発電効率、あるいは歩留まりの悪い製造装置に変わり、同社の手掛ける高効率の製造装置に対� �る需要が高まるとの見方である。2012年はこうした製造装置の買い替え需要や新製品の投入が鍵になる模様である。


将来の展望

同社は2011年5月30日に中期経営計画を発表した。同社は約10年前に中期経営計画を作成して以来、長い間、中期経営計画を作成してこなかったが、環境および自然エネルギー分野へのより一層の経営資源の集中という方向性が定まったことから、今回中期経営計画を策定したとしている。

同社は、中期経営計画の目標値を2014年3月期売上高で100,000百万円と置いている。ポイントは、1)太陽電池関連装置、消耗品ビジネス(坩堝など)の更なる拡大、2)装置関連事業におけるLED関連ビジネスの着実な成長、などを狙っていくという点であろう。同社は事業毎の目標値を開示していないが、同社の資料によれば、成長ドライバーは太陽電池関連事業であり、2014年3月期の売上構成比で60%強をめざす模様。また、LED関連ビジネスが含まれる装置関連事業も半導体業界の調整を経て、2013年3月期から2014年3月期にかけては大幅な増収を見込んでいる。

同社によれば、各事業の方向性は下記のようになる。

装置関連事業

  • 真空シール:高付加価値新製品の投入、韓国・中国における市場占有率の向上
  • 石英製品:太陽電池向け(中国企業向け)の拡販、LED/化合物半導体向けの拡販
  • LED:真空蒸着装置の拡販、サファイア炉の開発

太陽電池関連事業

  • 太陽電池用製造装置:製品ラインナップの拡充、機能向上により他社製品との差別化を追求。中国以外の海外市場開拓も進める(中国とそれ以外の地域の売上高構成比を、60%:40%へ)
  • 消耗品(坩堝、ホットゾーンなど):生産能力増強と品質向上によりシェアアップを図る
  • 太陽電池用部材(インゴット、ウエーハなど):新工場建設による供給能力増大

電子デバイス事業

  • サーモモジュール:自動車温調シート以外の用途へ拡販を進める

太陽電池関連事業に関していえば、同社が中期経営計画を公表した時点で、太陽電池用セル・モジュール価格は低下している。この要因として、当該市場における世界的な過剰供給能力(オーバーキャパシティ)を指摘する向きもある。一方、中長期的にみれば、太陽光発電システムに対する需要は大幅な拡大が見込まれている(「市場とバリューチェーン」の項参照)。従来からクリーンエネルギーとして注目されてきた分野ではあるが、2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原発の事故が各国のエネルギー政策に大きな影響を与え、需要拡大を後押しする可能性がある。そうした点を踏まえれば、同社のビジネスチャンスは広がっているともいえ、今後も太陽電池関連事業を中心に同社の動向が注目される。

一方、LED関連ビジネスに関していえば、同社は2010年1月に英Edwards Vacuum社より真空蒸着装置関連事業(Tescal事業部)を譲り受け、これによって本格的にLED市場での展開を開始した。Tescal事業が手掛けているのは、真空蒸着装置の製造・販売である。同装置はLEDの製造工程ではMOCVDの次の工程で使用される、LEDの製造工程では不可欠な装置である。同社は2011年5月時点でデモ機を開発済であり、それを東南アジア市場のデバイスメーカーに評価してもらい、同市場に参入したいとコメントしている。また、LED関連でいえば、同社のシリコン単結晶製造技術を活用し、サファイア炉の開発及び結晶製造技術の確立をめざすとしている。


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ビジネス 

同社は、技術系ベンチャー企業として1980年に設立された企業である。NASA(米国航空宇宙局)のプロジェクトから生まれた磁性流体と新素材として注目を集めるサーモモジュールの2つの技術を核に、エレクトロニクス産業、半導体産業、工作機械業界、民生機器産業などに製品やサービスを提供している。


フロントジッパーのタンクトップ

2011年3月期の産業別売上高をSR社が同社説明会資料を基に試算したところ、太陽電池向けの売上高が40%、半導体向けが27%となっており、LED向けの11%、自動車向けの5%、FPD向けの3%と続く。

同社のセグメントは、装置関連事業、太陽電池関連事業、電子デバイス事業の3つとその他に分けられている。


装置関連事業(2011年3月期売上構成比:47.8%)

半導体、FPD(フラット・パネル・ディスプレイ)、LED(Light Emitting Diodeの略、発光ダイオード)製造装置などに使用される製品の開発・製造・販売を行っている事業である。主要製品は真空シール、石英製品、セラミックス製品、EB(電子ビーム)ガン・真空蒸着装置、シリコンウエーハ加工など。

同社の主力製品である。真空シールは主に半導体製造装置やFPD、LED関連製造装置の基幹部品として使用されており、同社製品は約7割の世界シェアを誇る(2011年3月期、出所:同社)。

(技術的な補足:「真空シールと磁性流体」)
真空シールは磁性流体の応用製品である。磁性流体とは、実用化されているなかでは磁界に反応する唯一の液体物質で粘性を有している。そのため、磁性をコントロールすれば液こぼれが起きないという性質がある。磁性流体は1960年代にNASA(米航空宇宙局)が進めるアポロ計画の中で、無重力の空間でロケットエンジンに燃料を漏れることなく送るために考案された。人類初の月面着陸が実現した後、開発に携わった2人が立ち上げた会社がフェローフルイディクス社(現、フェローテックUSAコーポレーション)である。同社によれば、磁性流体自体は通常の研究所であれば作れる。しかし3つの主要成分、すなわち磁性微粒子、界面活性剤、ベース液を使用環境に応じてブレンドする必要があり、そのブレンドにノウハウがあるとの ことである。同社は約88%の世界シェアを誇る(2010年3月期)。磁性流体を手掛ける他の会社としては、イーグル工業(東証1部6486)や中国企業などが挙げられる。

半導体ウエーハやFPDの製造工程では、超精密な成膜加工を実現するため、密閉された真空空間で加工が行われている。空気、ガス、蒸気、微細粒子などの不純物が紛れ込むことは、回路パターンの品質を落とすことにもつながりかねないからである。真空シールは、加工が行われる密閉空間を外部から隔離するとともに、密閉空間の作業に必要な様々な運動を伝える役割も担っている。半導体製造装置の工程には、バッジ式と枚葉式があるが、同社製品は主に枚葉式で使われている。

近年はLED関連あるいは太陽電池関連産業からの引き合いも多い。LEDを製造するMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)装置に真空シールが用いられている。LEDを製造するためには、原料となるガスを送り込み、基盤の上にいくつもの層を成長させる必要がある。原料となるガスには毒性の強い特殊高圧ガスも利用されるため密閉空間を保つのが極めて重要とされている。

(技術的な補足:「LED」)
LEDの製造工程は大きく、チップ工程とパッケージ工程にわかれる。チップ工程は、更にMOCVD工程、エッジング工程、電極形成工程、研磨工程、ダイシング工程にわかれる。MOCVD工程はチップ工程で最も重要とされており、原料ガスを用いてサファイア基板(もしくはシリコンカーバイド基板)上にGaN(窒化ガリウム)などを成膜する工程のことである。MOCVD装置は独Aixtron社や米Veeco Instruments社が圧倒的なシェアを占めているとされる。

太陽電池関連産業に対しては、自社製品の単結晶引上装置に使用されている(1台当たり3個)ほか、薄膜系太陽電池製造装置向けに外販を行っている。

(出所:会社資料よりSR社作成)


2011年3月期の販売先の業種別シェアとしては、半導体向けが21%、LED向けが20%、FPD向けが19%、太陽電池向けが16%などとなっている。

主要顧客として、半導体では米Applied Materials社、米Novellus社、東京エレクトロン株式会社(東証1部8035)などが挙げられる。また、LEDでは独Aixtron社や米Veeco Instruments社、FPDでは株式会社アルバック(東証1部6728)やキヤノンアネルバ株式会社(非上場)、トッキ株式会社(JASDAQ9813)、韓Doosan社など、太陽電池ではアルバック社(同上)などがそれぞれ主要顧客である。

参入障壁としては、同社は次の3つを指摘している。まず、同製品に使用する磁性流体において、同社が高いシェアを握っていること。次に、同製品は顧客が新しい製造装置を開発するときに必要とされる部品である。そのため、同社は顧客の設計・開発段階から関与しており、他社に先んじて顧客ニーズを把握できるという点が挙げられる。最後に、真空シールの市場規模がそれほど大きくないため、他社が参入してくるインセンティブが必ずしも高くないことである。

同社によれば価格は、販売数量とある程度比例して変動している模様(販売数量が減少するときは値段も下がる)。そのため、同製品の収益性をみるうえでは、半導体、LED、FPD、太陽電池など顧客である産業のサイクルをみていく必要がある。なお、原材料価格としてステンレス価格の変動影響を受ける点には留意が必要である。

同社が真空シールで高いシェアを占め、優良顧客を抱えるなか、他の関連製品も同一顧客に対して拡販する目的で立ち上げた製品である。

高純度(純度:99.99%)を誇る石英ガラスは、熱に強く、薬品に侵されにくいという特性がある。半導体ウエーハや発光ダイオードの製造には、高温作業に耐え、活性ガスとの化学変化をおこさない環境で処理する多数の工程があり、高純度の石英ガラス製品が必要となる。具体的には、CVD(化学気相成長)、拡散用各種炉心管などの治具として用いられる。同社はモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社より高純度の石英ガラスを購入し、半導体メーカー向けに加工・販売までを行っている。また、半導体製造工程に必要な、あらゆる石英製品をラインナップしている。

2011年3月期の販売先業種別シェアとしては、(半導体製造装置)OEMが44%、チップメーカー向けが24%、LED向けが10%、PV向けが16%などとなっている。OEMとチップメーカー向けを足した68%が半導体向けといえる。

同製品の売上高は業界内で中堅規模であり、シェアは10%弱と同社はみている。信越化学工業株式会社(東証1部4063)などの大手が手掛けない分野を手掛けていると同社はコメントしている。

石英製品同様の目的で立ち上げた製品である。

同社が手掛けるセラミックス製品はファインセラミックス製品とマシナブルセラミックス製品に分類される。ファインセラミックスは高純度・高剛性・高精度が要求される半導体や液晶の製造工程(ウエーハ製造、処理、組立、検査)の各プロセスで使用されている。また、一般産業用分野で耐摩耗・耐熱部材としても使用されている。マシナブルセラミックスは、電気絶縁性・断熱性・耐熱性にすぐれ、様々な精密加工が可能な快削性セラミックス(削れるセラミックス)である。半導体や液晶の製造や設計から試作までのリードタイム短縮に利用されている。

同社は2008年9月に住友金属工業株式会社(東証1部5405)の子会社であった住金セラミックス・アンド・クオーツ株式会社の株式を取得、子会社化することによってマシナブルセラミックスを製品ラインとして社内に取り込んだ。

主要顧客として、日本電子材料株式会社(東証1部6855)や株式会社日本マイクロニクス(JASDAQ6871)が挙げられる。

同製品は、京セラ株式会社(東証1部6971)などの大手も取り扱っており、同社のシェアは石英製品と同様、あまり高くないと同社はコメントしている。

  • EBガン・真空蒸着装置

電子ビーム蒸着とは、金属や酸化物などを真空中で電子ビームを照射することにより加熱・蒸発させて基板上に堆積・蒸着させる方法。加熱温度の上限に制限がないため、どんな物質でも蒸発でき、精密なコントロールができるという利点がある。半導体の製造工程においては、スパッタリングのようにレーザーを堅い基板にぶつける手法が採用されている。しかし、LEDの製造工程では、基板に柔らかい化合物半導体を用いるため、基板上に蒸着させる方法が採用されている。基本的には化合物半導体用の蒸着システムであり、LEDの製造工程におけるMOCVDの次の工程で使用される。

同社は、もともとドイツの連結子会社でEBガン(エレクトロン・ビーム・ガン)を販売していた。しかし、高シェアの真空シールを納入する過程でLED市場の拡大が著しいと判断。これまで製造・販売してきた真空シール、セラミックス製品、石英製品に加え、上記LEDの電極形成工程で使用される真空蒸着装置および関連製品の品揃えを図ってきた。具体的には、2010年1月に同社米子会社が英国のEdwards Vacuum社より真空蒸着装置関連事業を譲り受けた。これによって、同社が元々手掛けていたエレクトロン・ビーム・ガンを真空蒸着装置に使用、電子ビーム蒸着システムの製造・販売が可能となった。

LSI(大規模集積回路)などの製造に不可欠なシリコンウエーハ基板の加工をコバレントマテリアル株式会社(非上場)と提携、製造している。ウエーハ加工は主に中国・上海で手掛けている。従来は、CMS事業(2010年3月期まで存在)に分類されていたが、自社ブランドも手掛けるようになり、2011年3月期から装置関連事業に区分されるようになった。月産能力は約40万枚であり、うち約30万枚がコバレントマテリアル社からの受託生産で残りが概ね自社ブランドでの販売である。


太陽電池関連事業(2011年3月期売上構成比:36.5%)

太陽電池関連製品の製造・開発・販売を行っている事業である。主要製品はシリコン(単・多)結晶製造装置、太陽電池用シリコン製品、石英坩堝などである。生産は全て中国子会社で行っている。

(技術的な補足:「太陽電池」、その他詳細は「市場とバリューチェーン」にも記載)
太陽電池を材料別に分けると、結晶系シリコン型と薄膜系シリコン型(薄いシリコン膜をガラス基板に蒸着させることによってシリコンの使用量を少なくした太陽電池)、化合物半導体型(シリコンを使用せず、銅、インジウム、セレン、ガリウムなどの元素からなる化合物半導体を用いた太陽電池)に分類できる。
2010年時点で太陽電池の約85%が結晶系のシリコン太陽電池である。結晶系シリコン電池は、さらに単結晶型と多結晶型に分類される。一般的に、単結晶シリコン太陽電池は変換効率(出力電気エネルギー÷太陽光エネルギー)が17-20%と優れているが製造コストが高い。一方、多結晶型は、変換効率は15-18%と単結晶型より劣るが製造コストでは優位となっている。2010年時点の主流は多結晶型であり、全体の約50%を占める。一方、単結晶シリコンは全体の約35%のシェアを占める。
結晶シリコン型以外の、薄膜系と化合物半導体系に関しては、現在は世界でトップシェアを有する米First Solar社が採用しているカドミウムテルル(CdTe)タイプを中心とする化合物系が大半を占めるとみられる。この他にも色素増感型、有機薄膜等が存在するが大きな市場を形成するまでには至っていない。
単結晶シリコン太陽電池は、米国のベル研究所にて1954年に世界で最初に開発された太陽電池である。単結晶シリコンは、シリコン原子が規則正しく並んでいるため、効率よく光を電気に転換させることができる。単結晶シリコン太陽電池に用いられる高純度シリコンは、パソコンに使われている半導体用のシリコンと同じような製造工程で作られる。ただし、半導体用のシリコンは半導体グレードと呼ばれ、純度が99.999999999%以上と高く高価なので、太陽電池用には99.9999%以上と少し純度が低い、ソーラーグレードシリコン(通称:SOG-Si)と呼ばれる相対的に安価な材料が使われている。
単結晶シリコン型太陽電池に用いるシリコンウエーハの製造工程は以下(下線部は同社が手掛ける製品)。
  1. ケイ石(シリコンの原石)などを電気炉において金属シリコンに還元し、ガス化などによって高純度シリコン(種結晶)を精製する
  2. 精製された高純度シリコンを約1,500℃の真空炉(ホットゾーンと呼ばれるカーボン坩堝とその中に受け皿として石英坩堝がある)において加熱し溶かす。その溶液を単結晶シリコン引上装置でゆっくり回転させながら引き上げると単結晶シリコンインゴット(シリコンの塊)ができる
  3. 角切ソー装置でインゴットの面取りをし、ワイヤソーで薄くスライスし、ウエーハに加工する。
一方、多結晶シリコン太陽電池は、単結晶シリコン太陽電池の生産プロセスの欠点である、単結晶シリコンインゴットの生産プロセスに時間・コストがかかる、大量生産が難しいという問題点を解決すべく開発された太陽電池である。多結晶シリコン型太陽電池に用いるシリコンウエーハの製造工程は以下のようになる(下線部は同社が手掛ける製品)。
  1. 単結晶と同様
  2. 精製された高純度シリコンを約1,000℃の溶融炉(多結晶製造装置)で溶かし、鋳型(角槽坩堝)に流し込む。そのまま冷却すると多くの結晶がつなぎ合わせた多結晶シリコンインゴットができる。
  3. 単結晶と同様
ちなみに薄膜シリコン太陽電池は、使用するシリコンの量を結晶シリコンの1/100に抑え、製造コストを下げたものである。薄膜シリコンは、高温で溶解して作る結晶シリコンとはと違い、200℃程度の加熱で作成する。一般的な方法は、プラズマCVD装置と呼ばれる真空炉を用いる。ここに同社に真空シールが用いられている。シリコンの原料となるシラン(SiH4)などのガスを放電により分解し、ガラスなどの基板に化学的にシリコンを付着させる。
同社が手掛ける製品をこうした太陽電池の材料別にまとめると以下のようになる。なお、同社は太陽電池製造プロセスの後工程の製品は手掛けていない。
単結晶シリコン太陽電池
シリコン単結晶引上装置(内部に真空シール)、石英坩堝、カーボン坩堝、単結晶シリコンインゴット、ウエーハ、角切ソー装置
多結晶シリコン太陽電池
シリコン多結晶製造装置、角槽坩堝、ウエーハ、角切ソー装置
薄膜シリコン太陽電池
真空シール

(出所:同社資料)

(出所:会社資料よりSR社作成)

  • シリコン結晶製造装置

太陽電池関連産業の主力製品は、「単結晶引上装置」あるいは「多結晶製造装置」。太陽電池パネルに使われるシリコン単(多)結晶の塊(インゴット)を製造する装置である。

同社の単結晶引上装置は世界シェアで約20%を占めている(出所:同社)。また、シリコンインゴットの世界生産量の過半を占めるとみられる中国地域に基盤を置いており、同地域に限ったシェアは約30%となる。2011年3月末時点で同製品の生産能力は月産100台である。受注から出荷までのリードタイムは概ね4ヵ月程度。

単結晶引上装置・多結晶製造装置は、高温かつ真空の状態でインゴット製造を行う装置であり、真空環境における制御がインゴット製造の歩留まり、ひいては最終製品の変換効率に影響を及ぼす。シリコンインゴットの製造工程、特に単結晶シリコン方式では、インゴット引上げに際しての歩留まり改善が焦点とされている。同社の「シリコン単結晶引上装置」には、回転部に同社のコア技術である「真空シール」が使われているほか、半導体製造装置の生産で培ってきた数多くの技術が活かされているようだ(従来、フェローフルイディクス社は半導体製造装置を手掛けてきたが、シリコンメーカーの内製化により需要が減少、撤退を余儀なくされた)。同社は、品質面での優位性が中国現地の装置メーカーに対する差別化につなが っているとコメントしている。

一方、多結晶製造装置のシェアは低く数%であると同社はコメントしている。同製品は、米GT Solar社。独ALD Vacuum Technologies社などが長年手掛けており、高いシェアを誇る。

同製品の生産能力は月産5台である。受注から出荷までのリードタイムは概ね5-6ヵ月程度。シリコン多結晶製造装置の利益率はシェアの低さや真空シールを使わないことなどから、シリコン単結晶製造装置と比べて低い模様である。

「石英坩堝」は単結晶引上装置の真空炉内でシリコン原料を溶解するための受け皿として使用されている。高純度の石英はシリコンの単結晶化の工程で、高温に強く活性ガスとの化学変化を起こさないことから使用されている。石英坩堝は、単結晶引上装置が1回稼働するごとに1個を消費する、いわば使い切りの消耗品である。同社のシリコン製造装置に必ず同社の坩堝が使われるわけではないが、同社は製造装置の納入先にも坩堝を販売していこうとしている。同社は世界シェアで約20%を占めており、太陽電池用の石英坩堝メーカーとしては世界No.1である(出所:同社)。同製品の生産能力は月産約18,000個である(2011年3月現在)。

同社は、単結晶製造装置同様、純度など品質面での優位性が差別化要素であるとコメントしている。具体的には、技術上重要なのは材料開発であり、半導体用の坩堝は砂が一種類のみ使われるのに対し、太陽電池用はある程度砂をブレンドさせながら品質を安定させる必要がある。


女の子スパンデックスタンクトップ

長期的な視点から、同社は製造装置よりも石英坩堝のような消耗品の方が伸びるとみている。つまり、製造装置は一度設置されたら、老朽化ないしは技術革新が起きるまで更新されることはないが、消耗品は常に一定の需要が生じるからだ。この点は、SR社にコピー機メーカーのコピー機とトナーの関係を連想させる。コピー機は一度設置されたら動かなくなるまで使用されるが、中のトナーは頻繁に交換が必要だ。キヤノン株式会社(東証1部7751)を始めとするコピー機メーカーがトナーで儲けているのは有名な話である。

また、同社はコバレントマテリアル株式会社(非上場)との合弁企業で多結晶シリコンの製造に用いる角槽(セラミックスを用いた角型の大型坩堝、ベッセル)も開始する。

  • 太陽電池用ウエーハ

同社自身がインゴットを引上げ、切断・研磨してウエーハまで加工する事業である。同社は太陽電池セルの基板に使用されるシリコン単結晶を上海で製造している。また、2011年3月期よりウエーハの販売も本格的に始めている。同社は、同事業の意義について、顧客に対して本当の意味でのソリューションを提供するためには、自らがそのプロセスを顧客よりも深く理解している必要があるためとコメントしている。

同社はカーボン坩堝や角切ソー装置、ウエーハ検査装置、など周辺製品・装置の開発・製造・販売にも取り組んでいる。


電子デバイス事業(2011年3月期売上構成比:12.0%)

主要製品は、サーモモジュール、磁性流体などである。

サーモモジュールとは電流を流すことで温度差を生じる半導体冷熱素子で、対象物を瞬時に暖めたり、冷やしたりすることができる製品である。小型で軽量、振動騒音がないことから、温度を一定に保つ目的でエレクトロニクス、光通信、バイオテクノロジーなどの成長産業から、レジャー用品、家電まで幅広い分野で採用されている。近年、用途として拡大しているのが自動車シートの温度調節である。同社は、米国の自動車部品メーカー米Amerigon社が開発した自動車シートの温度調節ユニットに「サーモモジュール」を供給している。米Amerigon社の製品は最終的に日米韓の大手自動車メーカーの主に高級車のシートに装着されている。

(技術的な補足:「サーモモジュール」)
サーモモジュールとは、直流の電気を流すと熱が移動して一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するという「ペルチェ効果」を応用した半導体冷熱素子。電源の極性を逆にすると吸熱と放熱を簡単に切り替えることができる。0℃から100℃まで0.1℃刻みで温度調節が可能。小型・軽量・ノンフロンでかつ微細な温度コントロールが可能な点が同製品の使用メリット。反面、大きなスペースで活用する際には代替品の方が勝る。「ペルチェ効果」の原理自体は1833年に発見されたが、実用化が進んだのは20世紀に入ってからといわれる。同社の山村社長は研究者として1970年代より製法に携わっている。

家電向けに同製品が使われている例として、空気清浄機、ドライヤー、エアコンなどが挙げられる。具体的には、空気清浄機は近年、マイナスイオン発生機能の付いた商品が人気となっているが、マイナスイオンを発生させるためにサーモモジュールが使用される。

サーモモジュールは、元々は潜水艦のエアコンなど軍事用に用いられていた。しかし、製造工程の自動化が難しく、採算の面から民生用途には適さないといわれていた。自動化を難しくしている理由は、サーモモジュールの中には半導体のダイスが並んでいるが、これが均一に並んでいないと性能(温度コントロール)を発揮しないためである。同社はこの問題を、中国で一貫生産体制を築くことにより克服した。また、同製造工程はビスマス、テルル、アンチモンなどの鉱物をインゴットにしてから電極を付けてスライス、組み立てるといった順になるが、原料となる鉱物に関しても中国で調達されている。原料価格高騰の影響は受けるが、基本的には人件費のウェイトが高い一方、材料費のウェイトが低いため限界利益率は高い。

同社の製品シェアは自動車向けでは100%だが(出所:同社)、その他用途も含めた合計の数値としては、軍事用もあり、正確な数値はわからないと同社はコメントしている。ただし、同社がトップシェアであることは間違いないようだ。同社は同製品の参入障壁は均一な製品品質を維持しながら、コストを抑制、採算を確保する点にあるとコメントしている。

磁性流体については、「真空シール」にて記載した通りである。自社製品の真空シールに使用されるほか、社外向けとしては家庭用、車載用のスピーカーに使用されている。同社によれば、磁性流体の用途は幅広いが、1製品当たりに使用される量が少ないため(数滴たらすだけ)、市場規模が限られるとのことだ。


その他

その他は、主に受託契約による他社製品を製造する事業である。製品は多岐にわたる模様だが、同社は顧客との守秘義務契約に伴う制約から詳細な記述は控えている。同社が開示可能な受託品として提示している製品には、「工作機械製造」、「装置部品洗浄」などがある。


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ビジネスモデルと収益性・財務指標

ビジネスモデル

同社は太陽電池、半導体、電子デバイス、LED、FPDなどの各産業に対して製品・サービスを提供する会社である。同社はシェアの高い中核製品を軸に他の周辺製品も拡充・販売していく戦略を遂行している。また、コストに関していえば、グローバル、特に中国の生産拠点をうまく活用することにより、コスト抑制に努めてきた。

同社の売上は大まかにいえば、上記各産業の動向と製品のシェアによって決まる格好となる。そのため、各産業の市場サイクルをみることが同社の売上を占ううえで重要といえる。特に半導体産業向けの売上高は比重が高くかつ変動の大きい。太陽電池産業関連などの売上比率が高まるにつれてシリコンサイクルの影響は徐々に軽減していくものと思われる。しかし、当面は半導体製造装置業界の設備投資動向を注意深くウォッチしていく必要があるだろう。


参考までに同社の売上高と費用(売上原価と販売管理費)を2005年3月期以降の年度の数値に基づいて回帰分析を行うと、固定費比率は約40%となる(注)。つまり、固定費の比率が高く、稼働率の高低に応じて営業利益が大きく変動する傾向があることを示す。

注)売上原価=売上高×0.72-371(R2=0.99)、販売管理費=売上高×0.19+982(R2=0.82)となる。つまり、売上原価の変動率は72%(固定比率は28%)、販売管理費の変動比率19%(固定比率は81%)である。売上原価と販売管理費合計の固定費率を算出すると約40%となる。2005年3月期以降の数値を用いたのは、2004年3月期まで3期連続で最終赤字となった。その際の構造変革などによって2005年3月期以降の収益構造が変わった可能性があるとみているためである。


収益性・財務指標

営業利益率の変動が大きいが、上記のように固定費率が高いことが主因であろう。


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SW(Strengths, Weaknesses)分析

強み(Strengths)

  • 太陽電池、LEDの市場成長ポテンシャルを享受し得るポジション:真空シールというコア技術を起点に太陽電池、LEDといった環境的側面から今後の成長が有望視される分野に幾つかの製品を供給している。同社のポジションが今後も継続する保証はないが、同社も当該分野に対する投資に力点を置いており、市場成長の恩恵を受ける体制は整っている。
  • 主力製品の高いシェア: 真空シールなど高いシェアを持つ製品を抱え、顧客の製品開発段階から同社が関わることも多い。そのため、他社に先駆けて需要動向を察知し、攻めの投資を行うことができる。例えば、装置関連事業の真空蒸着装置は同社が真空シールをLED向けに手掛けるなか、同分野の需要の高まりを察知、外部の企業から譲渡を受けた事業である。また、太陽電池用の単結晶引上装置には自社製品の真空シールが使われており、これが他社との差別化につながっているものとSR社は理解している。
  • 収益追求に対する柔軟な姿勢:(日本の)メーカーには、「良い物を作れば売れる」として職人気質にこだわり過ぎるあまり、収益性とのバランスを欠く企業が少なくない。その点、同社は「化学者集団」としての資質を発揮しつつも、あくまで収益を追求する姿勢が窺える。同社の山村社長は(沿革からも垣間見える)苦難の歴史がそうした体質を育んだ点を強調しており、SR社もその点に同意する。

弱み(Weaknesses)

  • シリコンサイクルの影響を受けやすい:主力製品の真空シールを始め、同社の業績は顧客である半導体製造装置の設備投資動向、つまりシリコンサイクルの影響を受けやすい。太陽電池関連事業や半導体以外の分野のウェイトが向上するにつれ、こうした傾向は徐々に薄れるだろう。しかし、当面はシリコンサイクルの影響を無視しえないものと考える。
  • 相対的な規模の小ささ:規模の大きなメーカーの一つのメリットとして、幾つかの製品・事業を抱えることによる「分散効果」が挙げられる。その点、同社は相対的に企業規模が大きいとはいえず、こうした製品・事業ポートフォリオの分散効果を享受しにくい可能性があるとSR社は考える。
  • 太陽電池の種類に応じたエクスポージャーの違い:同社に対する収益インパクトは、単結晶シリコン系、多結晶シリコン系、その他の順になるとSR社では理解している。そのため、仮に単結晶シリコン系以外の種類の太陽電池の普及が進んだ際には、同社が太陽電池市場拡大による恩恵を十分に享受できない可能性もある。無論、同社は多結晶シリコン系など他の種類の太陽電池に対するエクスポージャーも増やしている最中ではある。


グローバルネットワーク

営業拠点があるのは、日本、米国、中国、台湾、韓国、シンガポール、欧州(英国、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ、ロシア)。

製造拠点があるのは、日本、中国、米国、ドイツ、ロシア。特に中国での生産量が多い。

  • 装置関連事業:真空シールは日本、杭州、台湾、韓国、米国が拠点。石英製品は日本、杭州、セラミックス製品は日本、杭州で生産されている。
  • 太陽電池関連事業:太陽電池向けシリコン(単・多)結晶製造装置は上海、香港が拠点。太陽電池向けシリコン製品は上海、坩堝は杭州が拠点。
  • 電子デバイス事業:サーモモジュールは杭州が拠点


地域別売上高

2011年3月期でみて、日本の売上構成比は32.4%、海外の売上構成比が67.6%と海外の売上構成比が高い。同社は中国を始めとするグローバルな生産体制を確立しているほか、太陽電池産業、半導体産業などの海外顧客を多く抱えていることが理由であるとSR社は考える。


グループ会社(所在地、出資比率)

同社グループは、フェローテック社と連結子会社20社、持分法適用会社5社で構成されている。フェローテック社は真空シールの開発・製造・販売、サーモモジュールの開発・販売、磁性流体の開発・製造・販売を行っている。その他主要グループ会社は下記のようになる(括弧内は所在地および出資比率)。

  • 杭州大和熱磁電子有限公司(中国浙江省杭州市、100%):真空シールの製造・販売、石英製品の製造・販売、セラミックス製品の開発・製造・販売、サーモモジュールの製造
  • 杭州先進石英材料有限公司(中国浙江省杭州市、100%):坩堝の開発・製造・販売
  • 上海申和熱磁電子有限公司(中国上海市、100%):太陽電池向けシリコン製品の開発・製造・販売、サーモモジュールの製造、シリコンウエーハの加工・販売、その他
  • 上海漢虹精密機械有限公司(中国上海市、88%):太陽電池向けシリコン(単・多)結晶製造装置の開発・製造、その他
  • 香港漢虹新能源装備集団有限公司(香港、88%):太陽電池向けシリコン(単・多)結晶製造装置の開発・製造
  • Ferrotec(USA)Corporation:(米国ニューハンプシャー州、100%):真空シールの開発・製造・販売、石英製品の販売、セラミックス製品の販売、サーモモジュールの販売など


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市場とバリューチェーン 

「市場とバリューチェーン」の項では、同社の太陽電池関連事業に焦点を当てて記載する。


マーケット概略

地球温暖化問題や近年の原油価格高騰などから、化石燃料に替わるクリーンエネルギーが注目を集めている。また、原子力も注目される分野の一つだが、安全性の側面からはクリーンエネルギーに劣る。その有望なエネルギー源の一つが太陽光発電(Photovoltaic Power Generation:PV)である。太陽光発電は、太陽電池を利用し、太陽光を電力に変換する発電方式であり、二酸化炭素を排出しない。

太陽電池市場の推移およびその予測を示したものが上図である。2008年はスペインにおける太陽光発電の年間設置量の上限設置やフィード・イン・タリフ(FIT、Feed-In-Tariff、電力会社などに太陽光で発電された電気を全て一定価格で買い取ることを義務付ける制度)の削減が発表され、駆け込み申請が急増するなど特需が発生した。2008年の市場規模は6.17GW、うちスペイン市場は約46%を占めた。しかし、2009年はその反動やリーマンショックによる投資マネーの縮小などから太陽電池市場は伸び悩んだ。もっとも、2010年に入ると欧州のその他地域や日本などでFITなど優遇制度の導入が進んだことを背景に再び需要が盛り上がりをみせた。2010年の太陽電池市場は16.6GW、うち約80%を欧州が占めているとされる。ただ、中国などの新市場も台� ��してきており、需要の裾野は広がりをみせている。対する太陽電池セルの生産量は中国および台湾で約5割程度を占め、同地域の太陽電池の約80%が欧州向けとされている。(2010年の太陽電池設置の地域別シェアは、ドイツ:42%、イタリア:21%、その他欧州:18%、米国:5%、日本:5%、その他:9%)。



2011年に関しては、ドイツのFITが引き下げられることから需要が減退するとの懸念があったが、FITの引き下げは見送られた。また、中国、米国の需要増加が見込めるとされている。

中国は、2009年7月に中国財政省、科学技術部、国家エネルギー局が共同で「金太陽モデルプロジェクト」を発表。当該プロジェクトでは、太陽光発電に関するシリコンの生産から系統連携までを含めた太陽光発電関連の計画向けに、投資額の50-70%の補助金が支給されることとなった。中国ではこうした公的支援を受けて、再生可能エネルギーによる発電所建設が相次いで計画されている。

日本においても2009年11月から「日本版FIT」が導入された。日本の場合、FITは家庭用電力料金(約24円/kWh)の2倍に相当する48円/kWhで買い取ることとなり、太陽光発電システム導入へのハードルは一気に下がった。

EPIA社によると、2011年の太陽電池市場は計画を積み上げた通常シナリオに基づけば13.3GWと予測されている。また、政策的に成長が加速されれば、21.1GWまで膨らむ可能性もあるとされている。同社は2015年の市場規模に関し、通常シナリオに基づく予測で23.9GW、政策的に成長が加速されたシナリオに基づく予測で43.9GWとの推定結果を示している。もっとも、市場規模は各国の政策や太陽電池の価格、応用範囲次第の側面が強いため、これらの予測値は不確実性が高いものとSR社は考える。特に「グリッドパリティ(太陽光発電で生成した電力のコストが一般の送電網から供給される電力のコストと同等かより安価に供給される状態)」が達成される前は、各国の政策に負うところが大といえるだろう。

2011年3月に発生した東日本大震災に伴う福島第一原発の事故が各国のエネルギー政策に大きな影響を与え、需要拡大を後押しする可能性がある。各国の太陽電池関連事業に対する支援策およびエネルギー政策は下記のようになる(出所:同社資料、2011年5月時点、ポジティブ・ネガティブは太陽電池市場に与える影響)。

ドイツ

  • 2010年5月承認の改正再生可能エネルギー法に基づき、電力買取価格を大幅に引き下げた(ネガティブ)
  • 2011年5月、メルケル首相が全原発廃棄時期の2040年から2022年への前倒しを指示する旨を表明(ポジティブ)

イタリア

  • 2010年、電力買取価格を大幅に引き下げ(ネガティブ)
  • 太陽光発電の導入目標については、2010年発表のイタリアの国家再生可能エネルギー計画において、「2020年までに8GW」に引き上げられている(ポジティブ)
  • 2011年5月25日、下院において原発再開議論の無期限凍結等を定めた政令案が承認された(ポジティブ)

中国

  • 2011年3月に発表された「中国国民経済及び社会発展第12次5ヵ年計画要綱」では、エネルギー消費に占める再生可能エネルギー比率を2020年までに15%に引き上げる旨を発表(ポジティブ)
  • 中国国家発展改革委員会エネルギー研究所は、中国の太陽エネルギー発電装備の設置目標を2015年10GW、2020年50GWへと引き上げると発表(ポジティブ)

米国

  • 2011年の一般教書演説において、2035年までに電力の80%をクリーンエネルギー資源で賄うという目標を公表(ポジティブ)

日本


どのようにnorticトラックトレッドミル上のドライブベルトをrelaceん。
  • 2011年5月OECDの講演において、管首相が総電力に占める自然エネルギーの比率を2020年代に少なくとも20%に拡大する方針を表明(ポジティブ)
  • 非住宅設置用の太陽光発電を対象とした余剰買取水準が、24円/kWhから40円/kWhに引き上げられた(2011年度)。契約申込者には買取価格が10年適用(ポジティブ)

価格に関しては、今後、技術進歩、量産効果や設置コスト削減などにより太陽光発電のコストが低下し、「グリッドパリティ」が世界各地で達成されていく見込みである。太陽光発電コストは日射量などの影響を受けるほか、電力料金も国・地域により差があることから、グリッドパリティの実現時期は地域によって異なる。グリッドパリティは米First Solar社、および欧州のイタリアなど南欧の一部地域の企業で既に実現しているとされている。その他メーカー、地域においても2020年頃までには大半の地域で実現するとみられている(出所:日本政策投資銀行)。理論的にはグリッドパリティが達成された後は、電気を系統から購入するよりも太陽光発電設備を導入した方が安価になることから、需要が急激に拡大する可能性がある。一方、グリッドパリティが近づくにつれ、FITなどの政府支援は縮小されていくだろう。


調達品目と調達先

  • 単結晶引上装置および多結晶製造装置

同社は組立メーカーであり、調達品の価格動向などが同社に与える影響は軽微である。なお、単結晶引上製造装置に用いられている真空シールは自社製品である。

主原料は天然に産出される水晶もしくは石英。調達先は分散されていると同社はコメントしている。もっとも、原料価格の市況高騰の影響は受ける。


代替品

  • クリーンエネルギー間の比較

発電時に燃料が不要で温暖化ガス削減効果があるクリーンエネルギーとしては、太陽電池の他に風力発電、地熱発電、波力発電などもある。ただし、お互いに補完し合うケースも考えられるため、クリーンエネルギー間でトレードオフが生じるとまではいえないだろう。地熱発電や波力発電は機構が複雑な上に設置場所が限られるという欠点がある。設置場所が限られるという点では、風力発電も同様であり(米国などでは風力発電の導入率が高い、一方風力の向きが一定でない地域には向かない)、太陽電池の実用性が全般的に高いといえるだろう。地球上のエネルギー量は、太陽光が42兆kcal/秒、水力が5億kcal/秒、潮汐力が7億kcal/秒、地熱が77億kcal/秒、風・波・海流等が880億kcalとされている(出所:太陽光発電協会)。

「事業内容」の項に記載した通り、太陽電池には幾つかの種類がある。同社に対する収益インパクトは、単結晶シリコン系、多結晶シリコン系、その他の順になるとSR社では理解している。そのため、どの種類の太陽電池が普及するかによって、同社への収益インパクトは異なるものと推測している。 この点、太陽電池の性能や特徴は、1)変換効率、2)資源の有効性、3)価格低下の可能性、4)応用範囲の多様性、などによって特徴付けられよう。ただし、下記のように種類毎に一長一短があり、一概にどの種類が優れていると断ずることはできない。

  1. 変換効率は、太陽電池の性能を計る指標で高ければ高いほど性能が良いといえる。この点では、単結晶シリコン型の変換効率が17-20%と最も高く、一番優れているとされている
  2. 資源の有効性については、シリコンは砂や岩に含まれている成分で、ある意味無限である(地球上の地殻の28%以上)。一方、化合物半導体系太陽電池では、ガリウム、インジウムなど生産量の少ないレアメタル(希少金属)を用いるため、将来的に入手が困難となる可能性がある
  3. 価格低下の可能性は、太陽電池普及のためには欠かせない。ただし、現在主流のシリコン系太陽電池はコストを下げるための課題が多いとされている。ここでいう課題とは、純度の高いシリコンは製造コストがかかること、シリコン自体、調達が困難になっていること、製造工程が複雑であることなどである。この点、薄膜型は、シリコンの使用量が多結晶の製造設備の初期投資が大きいものの、相対的に製造効率は高く、低コストであるとされる。
  4. 応用範囲の多様性は、素材やデザイン、使用環境などに対する応用がどれだけ効くかを示す。この点、シリコン系太陽電池は、温度が30数℃を超えると変換効率が低下するという欠点がある。また、化合物系は重く割れやすいほか、有害化学物質を使用するため、廃棄後に環境破壊につながる恐れがある。有機薄膜太陽電池は、軽くて軟らかいため、応用範囲が広いとされるが、液体を使用しているため安定性が課題であるとされている。


顧客

  • 単結晶引上製造装置

90%強が中国の太陽電池用ウエーハ・モジュールメーカー。太陽電池用ウエーハ・モジュールメーカーとして世界No.1の中国COMTEC社は同社の製品を使用している。

中国および台湾の太陽電池用ウエーハ・モジュールメーカー。

販売先は日本、韓国、中国などの太陽電池用ウエーハ・モジュールメーカー。


参入障壁

太陽電池の製造工程は、半導体や液晶の工程と似ているため、半導体や液晶を手掛けるメーカーの参入が考えられるなど、必ずしも参入障壁が高いとはいえない。ただし、原料のシリコンに太陽電池の方が安価な素材を用いているほか、納入先を開拓する必要など、新たなバリューチェーンの構築が必要となる。また、参入した後に収益性を高める必要がある。一般的に、半導体の付加価値はウエーハ上の限られた面積の中でいかに集積度をあげることができるかとされており、シリコンウエーハの製造コストに占める比率は低い。一方、太陽電池は発電量を増やすために面積が必要とされるビジネスであり、シリコンウエーハの製造コストに占める比率が高い。つまり、半導体は製造プロセスにおける固定費率が高いのに対し、太陽 電池は変動費(原材料費)率が高い。両者は生産工程こそ似ているものの、ビジネスモデルが異なる。そのため、要求される製造装置、製品の品質も異なるものと思われる。


競合先

  • 単結晶引上製造装置

競合先は中国JYT社(北京京運通科技有限公司)であり、グローバルシェアは約30%とトップ。対する同社はグローバルシェアで約20%であり第2位につけている。また、中国天龍光電社も同社とほぼ同じシェアを占めている。その他中国メーカーが10数社ある。ただし、同社によれば、原材料からインゴットをつくるまでの材料利用率という指標があるが、同社は96%を保証しており、太陽電池のグレードとしては最高水準を維持している。一方、競合他社は同指標で75%程度であり、その分、価格水準が同社と競合他社の製品では倍近い開きがある模様。そのため、ウエーハ・モジュールメーカーは同社製品と材料利用率の低い製品を使い分けているようだ。

例えば、太陽電池では、99.9999%が最低必要な純度だが、単結晶シリコンウエーハの製造には99.999999%もしくは99.9999999%が理想とされる。そのため、99.9999%と純度が低い原料を入手したら、価格も相対的に安いため歩留まりの優先順位も下がるため、材料利用率が低い製造装置を使用する傾向がある。一方、99.9999999%のような純度が高い原料を入手したら、値段が高く歩留まりが重要となってくる。後者のようなケースで同社の製品が使われる傾向があると同社は分析している。

同社のシェアは数%と低い模様。最大手は米GT Solar社。独ALD Vacuum Technologies社が2番手である。

同社は世界シェアで約20%を占めており、太陽電池用の石英坩堝メーカーとしては世界No.1である。競合先は中国メーカーが多い。同社によればウエーハ・モジュールメーカーはシリコン単結晶製造装置と同様に、原材料の純度に応じて同社製品と相対的に純度の低い製品を使い分けているようだ。


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経営戦略 

同社の戦略を一言で言い表すのは難しいが、強いて言えば「生き残るために何でもやる」ということである。顧客のニーズに応じて常に変化を追い求めている。この点は同社の沿革からも明らかである。

中期的にみて、同社が力点を置いている事業が太陽電池関連事業である。特徴的なのが、製造装置に限らず、付随する消耗品、メンテナンス、ウエーハ加工など周辺の製品、サービスも拡充していこうとしている点。つまり、全てのプロセスを自社で完結できる体制を整え、それを顧客へのソリューションにも活用していこうとしている点である。そうした戦略は、SR社に半導体製造装置の世界No.1メーカーである米Applied Materials社の戦略を連想させる。

その他、環境、エネルギーなどをテーマに製品ラインナップを強化していく意向である。近年の例でいえば、CO2削減の声が高まるなか、電力消費量が少ないLEDの普及が高まるとみた上で、LEDを製造する装置への同社製品の拡販を進めているほか、LED用途に用いられる電子ビーム蒸着システムを持つ英国企業の事業部門を譲り受けるなど、新たな事業の柱に育てようとしている。


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前期以前の業績概況(参考)

2011年3月期業績

2011年5月20日、同社は2011年3月期決算を発表した。概ね2011年5月11日に上方修正した予想通りの実績であった。

各セグメントの事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。

装置関連事業:売上高30,181百万円(前年比87.3%増)、営業利益3,096百万円(前年同期は営業損失505百万円)

  • 真空シールは、年度前半からの台湾、韓国での製造装置稼働率の急回復を背景に半導体・液晶関連の設備投資が再開、LED製造装置用途も合せて需要が堅調に推移
  • デバイスメーカーの設備稼働率が高止まりしているため、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用する消耗品の需要も堅調に推移
  • 2010年1月に米国子会社がLED蒸着装置事業を英国企業より事業譲受した結果、LED市場の拡大に伴い売上高が増加

太陽電池関連事業:売上高21,231百万円(前年比93.1%増)、営業利益2,475百万円(前年比126.6%増)

  • シリコン結晶製造装置はこれまで受注した装置の出荷が計画以上に進み堅調に推移
  • 太陽電池用シリコンは、これまでのインゴットに加え、太陽電池用ウエーハの販売を開始したことにより、売上高が伸長
  • 石英坩堝は受注数量に見合う増産体制を進めた結果、売上が続伸
  • 多結晶製造装置に用いる石英角槽の新工場建築に着手した(2012年3月期下期竣工予定)

電子デバイス事業:売上高6,917百万円(前年比84.8%増)、営業利益1,165百万円(前年比521.2%増)

  • 自動車温調シート向けサーモモジュールは、各国政府の自動車販売支援策に加え、中国市場での自動車販売に支えられ、底堅く推移
  • サーモモジュールは、自動車温調シート以外の分野では、民生向け家電需要が継続し、半導体製造機器、医療用検査装置、光通信向けなどの高機能製品も堅調に推移
  • サーモモジュールは主に中国子会社で生産されているため、上昇する人件費抑制の目的で自動化ラインを設置し、稼働中。高機能製品の一部や発電用製品は、ロシアの子会社が開発および生産をしている

東日本大震災の影響については、一部真空シールを手掛けていた同社の釜石事業所が被災、災害による損失として479百万円を特別損失にて計上している(特別損失合計額は713百万円)。


2011年3月期第3四半期業績

2011年2月14日、同社は2011年3月期第3四半期決算を発表した。

第3四半期の事業概況について、同社は以下のようにコメントしている(売上高、営業利益は2011年3月期第3四半期累計期間)。

装置関連事業:売上高20,242百万円(前年比104.8%増)、営業利益2,291百万円(前年同期は営業損失782百万円)

  • 真空シールは台湾、韓国企業を中心としたエレクトロニクス製品の需要拡大を背景に、半導体・液晶・有機ELなどの設備投資が継続。一時的な調整はあったが堅調に推移
  • デバイスメーカーの設備稼働率が高止まりしているため、石英製品、セラミックス製品など製造プロセスに使用する消耗品の需要も堅調に推移

電子デバイス事業:売上高5,165百万円(前年比100.7%増)、営業利益852百万円(前年比1252.4%増)

  • サーモモジュールは、各国政府の自動車販売支援策が終了したが、中国市場での自動車販売拡大に支えられ底堅く推移
  • サーモモジュールはまた、国内のエコポイント終了を目前にエアコンなど民生製品向けの需要が継続。半導体製造機器、医療用検査装置、光通信向けなどの高機能製品も堅調に推移

太陽電池関連事業:売上高12,868百万円(前年比56.7%増)、営業利益1,002百万円(前年比21.2%増)

  • シリコン結晶製造装置は、これまで受注した装置の出荷も進み堅調に推移
  • 太陽電池用シリコン製品は太陽電池用のウエーハの販売を開始したことにより売上が伸長
  • 石英坩堝は、供給能力増強によって売上が伸長

トピックス

同社は2月1日に太陽電池向けシリコン製造装置などの受注状況についてリリース文を公表している。それによれば、2010年1月から6月末までのシリコン結晶製造装置の受注台数は430台となっていたが、その後引き合いを受けていた中国企業を中心とする10数社から、シリコン結晶製造装置870台、新製品の角切りソー装置70台を新規受注したとのことである。なお、本受注に関しては、顧客からの納期時期指定の関係上、2012年3月期に売上計上される見込みとのことである。


2011年3月期第2四半期業績

2010年11月12日、同社は2011年3月期第2四半期決算を発表した。また、同時に通期業績予想の上方修正を発表した。修正後の通期会社予想に対する上期の進捗率は以下の通り。

  • 売上高:51.1%(通期予想46,500百万円)
  • 営業利益:54.7%(同4,100百万円)
  • 経常利益:55.7%(同3,400百万円)
  • 当期純利益:58.5%(同2,300百万円)

2011年3月期上期は前年比77.0%増収、営業利益は2,244百万円(前年同期:営業損失543百万円)となった。業績を牽引したのは装置関連事業であり、同事業は売上高が前年比117.8%増収となったほか、営業利益は1,370百万円(前年同期:営業損失824百万円)となった。また、電子デバイス事業も前年比101.9%増収、営業利益は411百万円(前年同期:営業損失72百万円)であった。太陽電池関連事業に関しては、前年比34.7%増収となったものの、営業利益は前年比17.9%減の357百万円に留まった。

上期の事業概況について、同社は以下のようにコメントしている。

装置関連事業

1)真空シール:会社想定以上に売上が拡大

  • 新興国需要に牽引され半導体はアジア、米国市場が好調に推移。国内も回復した
  • 欧州LED市場が好調を維持
  • FPDは安定局面に入った
  • 太陽電池用薄膜装置向けの売上高が徐々に拡大した

2)石英製品

  • 台湾メモリー市場が活況となり設備投資が相次いだ
  • アジア、国内ユーザー、米国大手OEMから受注が急増した
  • LED装置向けで受注増加に生産が追い付かなかった

3)EBガン・蒸着装置

  • LED用蒸着装置が好調であった

電子デバイス事業

サーモモジュール製品

  • 自動車温調シートは自動車産業が各国政府の支援策により、回復。米国市場とアジア市場での自動車販売が寄与
  • その他産業向けでは半導体向けが好調であったほか、光学・バイオ向けでも売上が伸びた

太陽電池関連事業

  • 太陽電池シリコン製造装置の出荷は前年比で減少したが、受注は急回復。既存客からのリピートおよび新規顧客からの受注が増加した
  • 大口顧客の1社の支払いが滞ったため、第2四半期に引当処理を行った。これが同事業の減益の主因。通常は受注時に30%、出荷時に60%、検収時に10%と3回に分けて代金回収を行うが、当該顧客には違う代金回収方法を行っていた
  • 太陽電池用シリコン製品は、太陽電池市場の需要増加により結晶が堅調に推移。太陽電池用ウエーハ生産を開始、評価販売を実施中
  • 坩堝は受注が好調で設備投資を継続し、供給能力を増強した。また、中国顧客の同社製品に対する評価が向上し、受注は好調であった

トピックス

同社は2010年11月5日に、東京海上日動火災保険株式会社を割当先とする第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債(以下、新株予約権付社債)を発行し、太陽電池関連事業における設備投資資金2,000百万円(希薄化率7.72%)を調達した。

具体的な資金の使途は以下。

  • 上海ウエーハ製造設備の増強:650百万円(支出予定:2010年12月~2011年9月)
  • 上海ウエーハ製造用工場建屋増築:450百万円(同2011年2月~2011年9月)
  • 杭州多結晶太陽電池用の角槽事業出資金:888百万円(同2010年11月)


2011年3月期第1四半期業績

2010年8月13日、同社は2011年3月期第1四半期決算を発表した。また、同時に上期業績予想の上方修正を発表した。修正後の上期業績予想に対する第1四半期の進捗率は以下の通り。

  • 売上高:50.9%(上期予想21,000百万円)
  • 営業利益:56.4%(同1,750百万円)
  • 経常利益:70.3%(同1,300百万円)
  • 四半期純利益:79.3%(同830百万円)

2011年3月期第1四半期は前年比64.2%増収、営業利益は986百万円(前年同期:営業損失238百万円)となった。業績を牽引したのは装置関連事業であり、同事業は売上高が前年比108.4%増収となったほか、営業利益は558百万円(前年同期:営業損失401百万円)となった。また、電子デバイス事業も前年比108.3%増収、営業利益は152百万円(前年同期:営業損失51百万円)であった。太陽電池関連事業に関しては、前年比15.0%増収となったものの、営業利益は前年比7.3%減の243百万円に留まった。

2011年3月期第2四半期(上期)業績予想の上方修正は下記の通り。

  • 売上高:21,000百万円(通期予想18,780百万円)
  • 営業利益:1,750百万円(同1,390百万円)
  • 経常利益:1,300百万円(同1,170百万円)
  • 当期純利益:830百万円(同700百万円)

同社は上方修正の理由について第1四半期の業績状況が好調なためと説明している。一方、通期業績予想については、景気や為替動向など経営環境の先行きが依然不透明であるとして、期初発表の数値を据え置いた。

損益計算書 


売上高


2007年3月期は全セグメントが堅調であり、35.8%の増収となった。顧客の設備投資増加により真空シールおよび石英製品の売上は堅調に推移し、装置関連事業の売上高が41億円増加(前年比35.3%増)した。電子デバイスは、内外の自動車メーカーからの需要拡大により19億円の増収(前年比55.1%増)となった。また、CMS(受託生産)事業は、主にシリコン関連の受託生産および新工場稼動開始により売上高は26億円増加(前年比29.1%増)した。

2008年3月期に電子デバイスおよびCMS事業は成長が鈍化したが、この鈍化は装置関連事業の好調な売上により相殺された。装置関連事業の売上高は、真空シールがFPDおよび半導体製造装置産業の投資減少を受けて前年比横ばいであったが、石英製品は19億円の増収(前年同期比36.0%増)となり、同セグメントの成長を牽引した。CMS事業は、主に太陽電池事業の成功(ウエーハ加工やその他分野は不振であったものの、中国における太陽電池装置の需要により相殺された)により、約388百万円の増収(前年比3.4%増)となった。電子デバイス事業は、主に自動車メーカーによる同社のサーモモジュール需要に支えられ322百万円の増収(前年同期比6.1%増)となった。

2009年3月期の売上高は前年比横ばいであったが、これは太陽電池製品が同社の唯一の成長分野であった事実を見えにくくしている(同社は2009年3月期に一部セグメントの売上高を再分類し、太陽電池セグメントを新たに設けていることに留意されたい)。太陽電池事業の売上高は、64億円増加した(前年同期比137.6%増)。主に製造装置の牽引によるが(具体的にはシリコン多結晶製造装置の出荷を開始した)、他の分野も貢献した。装置関連事業は30億円の減収となったが(前年比17.6%減)、その最大の要因は、世界的な経済・金融危機(リーマンショック)によって自動車および半導体の需要が低下したことである。電子デバイス事業の売上高は、自動車メーカーによる減産を受けて13億円減少した(前年比22.3%減)。CMS事業は、主� ��半導体業界の世界的な減速がウエーハ加工および装置洗浄の需要に響き、21億円の減収となった(前年比22.6%減)。

2010年3月期における売上高は全セグメントで落ち込んだ。装置関連事業の売上高は24億円減少したが(前年比17.1%減)、これは主に真空シールの売上減少による(15億円の減収、前年比27.3%減)。もっとも同社は真空シールに関し、2010年3月期中に半導体市場が底入れし、LEDおよびFPDメーカー双方からも需要が回復したとコメントしている。石英製品に対する台湾メーカーの需要なども寄与し、同セグメントは下期に回復。年度実績でみれば、業績悪化はある程度が抑えられた格好。CMS事業の売上高は16億円の減収となった(前年比23.2%減)。ウエーハ加工の需要は横ばいであったが、工作機械製造およびその他CMS事業が年度を通して低迷した。電子デバイスに関しては、2009年3月期下期から2010年3月期上期の間に売上高が底打ちしたも� ��の605百万円(前年同期比13.9%減)の減収となった。電子デバイスの主な減収要因は、2008-2009年の世界的な景気後退で自動車メーカーが専ら痛手を被ったことによる(米国のGMは破産宣告、複数のグローバル自動車メーカーが政府の救済措置を受けた)。太陽電池セグメントの売上高は、経済・金融危機と価格競争の影響で2009年3月期に受注が減少したため440百万円の減収となった(前年比4.0%減)。もっとも、同社は、太陽電池関連事業の売上が2010年3月期下期に回復基調に入ったとコメントしている。

営業利益

同社の営業利益は2008年3月期に最高益となったが、その後は2010年3月期まで減益傾向が続いた。これは、2008年から2009年にかけての世界的な経済・金融危機が売上高にマイナスの影響を及ぼしたためである。同社の費用に占める固定費の比率が高いため、同社の営業利益は売上高次第で大きく変動する。

2009年3月期の営業減益の要因の一つは販売管理費の増加にある(同社は子会社フェローテックセラミックスを吸収合併した)。2010年3月期において、同社は販売管理費を削減したものの、売上減少のペースには追い付かず、営業利益率は2003年3月期以来最低水準となった。


過去の会社予想と実績の差異

2010年3月期の営業利益は、売上総利益の減少と売上高販管費率の上昇により期初会社計画を大幅に下回った。売上総利益は、2010年3月期に27億円減少した(前年比24.3%減)。これは販売数量の低下、すなわち稼働率が低下し、売上総利益および売上総利益率に影響したことによる。2010年3月期の販売管理費の減少額は約655百万円に留まった(前年比7.7%減、売上総利益減少より小幅)。そのため、売上高販管費率が上昇し、営業利益の減益につながった。

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貸借対照表 

資産

同社の貸借対照表は2006年3月期から2010年3月期まで潤沢な流動性を有している。すなわち、流動資産は2006年3月期から2009年3月期まで負債合計とほぼ同水準であり、2010年3月期には負債合計を上回った。流動資産と固定資産の比率は過去数年間で変化している。当初は資産の大部分が固定資産であったが(2006年3月期においては総資産の約60%)、2009年3月期には流動資産が固定資産を上回った。同社において流動資産が増加したのは、運転資本が2006年3月期の 55億円から2011年3月期の160億円近くに増加した結果である。

売掛金は2011年3月期に大幅に増加した。売掛金の増加は同社によると販売活動の活発化に関連している。売上高は前年比83.5%増となった。


負債

同社の負債は2006年3月期から2011年3月期までは、流動負債の比重が高い。短期借入金は、同社が子会社フェローテックセラミックス購入のために資金調達を行った2009年3月期にほぼ倍増した。同社の潤沢な流動性を鑑み、流動負債と固定負債の比率は負債総額ほど重要ではないとSR社は考えている。


自己資本

自己資本の増減は、概ね純利益の変動および配当、新株予約権の行使等に影響を受けてきた。


1株当たり数値

同社の発行済株式数は、2008年3月期、2010年3月期、2011年3月期にそれぞれ新株予約権の権利行使によってそれぞれ増加した。


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キャッシュフロー計算書 


営業キャッシュフロー

同社の営業キャッシュフローに占める減価償却費の比率は高い。2006年3月期から2010年3月期までは減価償却費が純利益を上回っている。

運転資本の増減も、営業キャッシュフローの安定性に影響を与えている。


投資キャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、同社のビジネスが資本集約的であることを示唆している。SR社は、太陽電池関連製品など新製品の投入のため、設備投資ニーズは今後も高いと推測している。


財務キャッシュフロー

2009年3月期における財務キャッシュフローの増加は、主にフェローテックセラミックスの買収に付随した長短借入金の増加による。

単純フリーキャッシュフロー

同社の単純フリーキャッシュフローはマイナスとなる傾向がある(2001年3月期以降、プラスとなったのは2006年3月期と2008年3月期のみ)。SR社は、これが同社の方針、すなわち将来の成長に投資するという方針を実証していると考えている。すなわち、利益変動にかかわらず、設備投資は比較的一定水準に保たれている。SR社は、同社が投資によって太陽電池事業で支配的な地位を築くことができれば、大きな先行者メリットがあると考える。


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沿革

1980年 日本フェローフルイディクス株式会社(現、株式会社フェローテック)を、フェローフルイディクス社(現、フェローテックUSAコーポレーション)が東京都港区に設立し、コンピュータシール、真空シールおよび磁性流体の輸入販売を開始
1983年 コンピュータシールおよび真空シールの製造を開始
1987年 久保田鉄工株式会社(現、株式会社クボタ(東証1部6326))等が、フェローフルイディクス社より同社全株式を譲受。磁性流体製品についてのライセンス契約をフェローフルイディクス社と締結
1988年 磁性流体の製造を開始
1992年 杭州大和熱磁電子有限公司を中国浙江省杭州市に設立し、サーモモジュールの製造を開始
1993年 磁性流体製品についてのライセンス契約を終了し、フェローフルイディクス社との間で相互に磁性流体製品を供与するクロスライセンス契約を締結
1995年 上海申和熱磁電子有限公司を中国上海市に設立し、サーモモジュール用材料の製造を開始
1995年 商号を株式会社フェローテックに変更
1996年 同社株式を日本証券業協会に店頭登録
1997年 シンガポールのラップ社(現、フェローテック・コーポレーション・シンガポール)の株式を取得し、東南アジアでの販売および技術開発の強化
1998年 株式会社ジーエスキューの株式を取得し、石英事業に参入
1999年 フェローフルイディクス社(現、フェローテックUSAコーポレーション)を株式公開買付により買収
2004年 日本証券業協会への店頭登録を取消し、ジャスダック証券取引所に株式を上場

同社は1980年に米フェローフルイディクス社の日本法人として設立された。その後、元親会社フェローフルイディクス社と軋轢や主力商品の衰退など何度も危機を経験している。1987年にはフェローフルイディクス社が同社の売却を試みていたが、同社はMBO(マネジメント・バイアウト)で会社を買い取った。1991年に同社は米法人を設立。1992年にフェローフルイディクス社の真空シールの特許が切れたので米国でのビジネスを積極化させようとするが、フェローフルイディクス社より提訴され、訴訟合戦となった。フェローフルイディクス社は成長した元子会社を再度、買収しようとしたが頓挫。そして1999年には逆に、同社がTOB (株式公開買い付け)により、フェローフルイディクス社を買収して子会社(フェローテックUSAコーポレーション)とした。その他にも、1980年代以降の収益柱であったコンピュータシール(磁性流体の応用製品でハードディスクドライブの密閉材料として用いられた)がHDDの技術変化によって、使用されなくなるといった危機も経験している。

年代別に同社の歴史を紐解くと、1980年代は、磁性流体とその応用製品(コンピュータシール、真空シール)の製造販売を開始、同社のコア技術を確立した時期である。1990年代は危機を乗り越えながら積極的な海外へ進出した時期である。1991年に米国、1992年に中国杭州、1995年に中国上海、1997年にシンガポール、1999年に欧州(フェローフルイディクス社の買収により)に進出している。一方、2000年以降は新たな収益基盤の確立を進めてきた時期といえよう。そのために、活発に活用してきたのが実施してきたのがM&Aやアライアンス、グループ会社の再編であり、一覧にすると下図のようになる。


M&A・アライアンス・グループ戦略の推移


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ニュース&トピックス 

2011年11月

2011年11月14日、同社は2012年3月期第2四半期決算及び通期会社予想の修正を発表した。


2011年9月

2011年9月30日、同社は同日付で株式会社三菱東京UFJ銀行をアレンジャーとし、住友信託銀行株式会社と株式会社北日本銀行をコアレンジャーとするシンジケートローン契約を締結したと発表した。

  • 契約金額:5,000百万円
  • 契約期間:5年(コミットメント期間1年)
  • 借入形態:タームローン(コミットメント期間経過後、4年の長期借入契約)
  • 資金使途:長期運転資金


2011年8月

2011年8月12日、同社は2012年3月期第1四半期決算を発表した。また、同時に2012年3月期上期業績予想の上方修正を発表した。


2011年7月

2011年7月20日、同社は2011年7月11日に発表した新株式発行および株式売出しの条件が決定したと発表した。

同社は今回の一般募集および第三者割当増資による調達資金(手取概算額上限約6,626百万円)の使途として下記の点を挙げている。

  1. 5,050百万円:太陽電池関連事業に対する設備資金
  2. 1,000百万円:装置関連事業に対する設備資金
  3. 576百万円:2011年9月末までに返済期限を迎える短期借入金の返済に充当

詳細は以下のようになる。

1)公募による新株発行(一般募集)

  • 発行価格:1株につき1,591円(2011年7月20日の終値1,641円に対するディスカウント率は3.0%)
  • 発行総額:6,364百円
  • 払込期日:2011年7月27日

2)第三者割当による新株式発行

  • 払込金額:1株につき1,508.95円
  • 払込金額総額:(上限)633,759千円
  • 払込期日:2011年8月24日

3)株式売出し(オーバーアロットメントによる売出し)

  • 売出価格:1株につき1,591円
  • 売出総額:668,220千円
  • 受渡期日:2011年7月28日


2011年7月11日、同社は新株式発行および株式売出しを同日開催の取締役会で決議したと発表した。

予定通りの株数が公募増資により発行された場合の希薄化率は15.4%、同じく第三者割当増資による希薄化率は1.6%、合計17.0%となる(2011年6月30日の発行済株式総数は26,046千株)。

新株式発行および株式の売出しの詳細は以下の通りである。

1)公募による新株発行

  • 募集株式数:同社普通株式4,000千株
  • 募集方法:一般募集
  • 申込期間:発行価格等決定日(2011年7月20日から2011年7月25日までのいずれかの日)の翌営業日から2営業日後まで
  • 払込期日:2011年7月27日から2011年8月1日までのいずれかの日

2)第三者割当による新株式発行

  • 募集株式数:同社普通株式420千株
  • 割当先:大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社
  • 申込期日:2011年8月23日
  • 払込期日:2011年8月24日

3)株式売出し(オーバーアロットメントによる売出し)

  • 売出株式数:同社普通株式420千株
  • 売出人:大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社
  • 受渡期日:2011年7月28日から2011年8月2日までのいずれかの日


2011年5月

2011年5月20日、同社は2011年3月期通期決算を発表した。


2011年5月11日、同社は2011年3月期通期の業績予想の上方修正を発表した。修正内容は下記の通り。

  • 売上高:57,000百万円(前回予想54,000百万円)
  • 営業利益:6,900百万円(同5,500百万円)
  • 経常利益:6,200百万円(同4,600百万円)
  • 当期純利益:4,400百万円(同3,200百万円)

同社は上方修正の理由として、1)装置関連事業でFPDやLED製造装置用途の受注が堅調であったこと、2)太陽電池関連事業でシリコン結晶製造装置の出荷量が伸びたほか、太陽電池用シリコン製品の需要が旺盛であったこと、などを挙げている。


2011年3月

2011年3月17日、同社は3月11日に発生した「東日大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。

被害の状況

  • 同社は、津波の被害が大きな岩手県釜石市に真空シールを生産している釜石事業所を設けている。
  • 釜石事業所勤務の従業員の安否については、全員無事であることを確認済。しかしながら、多くの従業員は現在も避難所へ避難している状況にあり、本社より支援物資を搬送した。
  • 石英製品を生産している福島県会津若松市の会津事業所においては、従業員に被災者は無く、事業所の被害も軽微。設備の損傷有無確認を確実に実施し、インフラ整備がなされたうえで操業を再開する
  • 東京本社、その他の事業所(千葉テクニカルセンター等)においては、事務所・設備等に被害はなく、平常通りの営業を行っている

今後の見通しと対策

  • 現在、地震及び津波による釜石事業所の被災状況については、事業所建屋は損壊しており、製造設備等にも甚大な被害が確認されている。操業再開については、インフラ整備も含め相当な時間を要するものと思われる
  • 上記の対策として、中国杭州工場および千葉テクニカルセンターにおいて代替生産及び品質試験等を開始している。真空シールの中国生産比率は既に95%程度であり、修理品・特殊品・特急品など国内での対応が必要な顧客向けに中国拠点での生産を拡大し、5月以降から納期遅延は解消される見通し


2011年3月14日、同社は、3月11日に発生した「東日大震災」による影響について、下記のようにコメントを発表した。

被害の状況

  • 同社グループは大きな揺れを観測した岩手県釜石市及び福島県会津若松市に事業所を設けている
  • 釜石事業所勤務の従業員については、避難所へ避難している状況にあり、同事業所の様子も不明
  • 会津若松事業所においては、被害が軽微であり、ガス等の配管の点検、電気炉、洗浄設備、排水処理施設の損傷有無確認を実施してから操業再開を行う予定
  • 東京都内をはじめその他の事業所においては、事務所設備に大きな被害はなく、ほぼ平常通りの営業が行える見通し

業績への影響

今後、被害状況の確認後、業績に与える影響が判明した場合は、速やかに開示する


2011年2月

2011年2月25日、同社は2011年3月期期末配当予想を前回予想の12円から20円(うち2円は会社設立30周年記念配当)へと修正した。


2011年2月14日、同社は2011年3月期第3四半期決算を発表した。


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トップ経営者 

山村章代表取締役社長

1969年に米ノースイースタン大学大学院修士課程を修了後、米ケンブリッジ・サーオミニックス社などで磁性流体・サーモモジュールの研究開発に従事。その後、1979年にフェローフルイディクス社(現フェローテックUSAコーポレーション)に入社。1980年の同社設立より社長現任。

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従業員 

同社の2011年3月期末時点の連結ベースの社員数は6,424名(単体200名)である。単体の社員の平均年齢は40.3歳、平均年収は600万円、平均勤続年数は12.7年である。


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IR活動 

同社は半期ごとに決算説明会を開催し、IR情報を日本語と英語の両方で公表している(説明会資料、財務諸表、決算発表会のウェブキャストなど)。


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社名の「フェローテック」は、フェロー(Ferro:合金鉄)、テック(Technology:技術)から成る造語である。ちなみに、元々の親会社であったフェローフルイディクス社の社名は磁性流体(Ferrofluid)に由来する。

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